りんごのうえん

反資本主義、反家父長制

『夢の国から目覚めても』読後すぐの、ざっくりとした感想。

読みました。

bookclub.kodansha.co.jp

 

【総評】

「百合作品は誰のためのものか」という問いかけに対する答えが良かったと思う。

「あー、あるあるだよね」というリアリティのある描写も多かった。

ただ、バイナリーでシスジェンダー中心主義っぽいところは気になったかな。

 

 

【細かい描写で気になったところ】

いっぽうで、ヘテロ女性視点で女性と付き合うことを「男性との付き合いと違う」と語る時に、身体性を中心に描くことは、手垢の付いたシスセクシズム表現だとも思います。
古くは、中山可穂の作品とかでよく出てくる感じの(中山可穂の作品でこの手のことを語る人物は、ヘテロだったりバイだったりするけど)

 

 

男性に襲われるのではないかという不安を「精液をかけられる」と描写することにはリアリティもあるものの、こういった表現はトランス差別の文脈で’犬笛’ 的にも使われるので危ういな、とも思いました。

女性同士の世界を、男性によって乱暴に破壊されるのではないかという不安は、リアルなものだと思います。それは私も抱いてる不安の一つです。

でも、それって男性の身体云々よりも、男性の暴力が正当なものとして扱われてしまう社会が怖いんですよね。

男性の暴力支配を、「男性の身体がそうだから」という理由で正当化してしまう社会が怖い。

力が強い者が上だとされる社会で、男性より力で劣っているとされる女性が、暴力を受けることは「当たり前」で、男性が女性に暴力を振るうか/振るわないかは、男性の機嫌次第みたいな風潮が怖い。

暴力を振るわないなんて、当たり前のことなのに。

男性を怖いと思う気持ちも、本質的なものではなくて、社会的に構築されている部分が大きいと思います。
(「男は加害性を持つ生き物だ」とか「女は男には絶対に力では敵わない」といった言説は、男性の暴力支配を正当化する言説だと思います)

だから、男性からの暴力を脅威だと描く際に「精液をかけられる」云々は、ちょっと違うかな、と思いました。

 

他の部分では共感するところも多く、すぐ読み終えてしまいました。
「百合を描く人」をメタ的に可視化したところが、意欲的だと思います。

私は言語化するのに時間がかかるほうなので、読後すぐの感想はここまで。

また思うところがあったら、都度更新する予定です。