りんごのうえん

反資本主義、反家父長制

初めてのボディスーツ

三十三間堂にして、初めてボディスーツなるものを着てみんとす。先日通販で安く売っていたのを手に入れたのである。ボディスーツ…それは「おばさん」のイメージ。ふくよかな体型の母が、一生懸命ベージュの鎧に肉を固めていた姿…それが私の、ボディスーツの原体験だ。折しも、私が通販で頼んだ「ソレ」も、ベージュ色であった。

まずは手に取り、しばし観察。
私はお試しということで、ノンワイヤーのものを買ったのだが、それでも形状記憶がしっかりしている。しかしながらストレッチはきく。安いながらに刺繍も可愛く、縫製が甘いのはご愛敬。この値段であれば仕方が無い。私が求めているのは、とにかく「肉襦袢をしっかりホールド」、この機能だけである。
しげしげと眺めた後、いよいよ身を固める時。
股部分がフンドシ様のハイレグとなっており、下から履こうとした時に
「あっ…」
股部分にボタンが付いているのを見付けた。プチっと外す。お股の部分がコンニチワ。
どうやらトイレの際、そこのボタンを外して要を足すようだ。股部分の布がブラブラするので、トイレにドボンしたり、排泄物を付着させちゃったりする未来がうっすらと見え…いかん、そうならないよう。気を引き締めてトイレに行かねばと覚悟を決める。

「…これは…どうやって着るんだ」
さすがお堅いものだけあって、一枚岩ならぬ一枚ツナギとなっている。頭から被るか、脚の方から通して履くか迷うこと請け合い。あいにく、取扱説明書的なものも本商品には添付なし。
お股部分がオープンしたことにより、上から被れそうな気もする。そうだ、ウエスト部分が通りづらそうだ。上から行ってみよう。
「…!?!?!?!?」

き、キツい。肩紐が片方は通っても、もう片方が通らない。私の身体が硬いのか?いや私は人より身体は硬いが、まさかこの普通に市販されているボディスーツ、身体の硬い人には着れぬというのか!それとも、これを着るためには、マリック伊東並みの芸当が必要なのか。選ばれし者だけが着ることのできるモビルスーツ…。

悪戦苦闘すること約十分、ふとある重大なことに気付く
「ウエストは肩幅より狭い」。
下から履くんじゃんねー、やっぱりねー、もー、なんて、照れ隠しに独りごちりながら下からの再挑戦。
しかし、やはりキツい。いくらウエストが肩幅より細くても、鎧を通すのは至難の業。「ふんぬっ」「んがあっ」「ふんっ」などと、声にもついつい力が入る。
苦節十分、さて着ると、お腹部分など最近ブヨブヨだった部分がスッキリとおさまっている。肉襦袢は鎧の下に仕舞い込まれた。
「やったー!着れた!初めてのボディスーツだ!」と喜び勇み、意気揚々と鏡の前に立ってみると、果たしてそこにはかつて嫌悪していた母親とそっくりな、ベージュの鎧が「おばさんくさい」自分の姿が映っていたのであった。また一つ、大人の階段を登って経験値を上げましたよ、母さん。

次はセパレートタイプのものを買ってみよう。